健全な木は種から育った実生(みしょう)の木
2016年8月4日 ·
健全な木、健全な山とはどういうものかを知ることが大切だ。健全な木は種から育った実生(みしょう)の木である。実生の木には頑丈で深い主根がある。樹齢1000年というような大木は、全て実生の木である。原生林は実生の木の森である。原生林の根は深いので、大量の雨水を保持することができるので、天然の森は水源涵養地となっている。健全な山は、山の環境に適した種類の実生の樹木が生えている山である。樹木の根が土壌中に張り巡らされており、降雨により土壌が緩んでも容易に土砂崩れが起きない。
高い山の尾根にはアカマツやクロマツやモミなどの針葉樹が生える。標高が下がると、ケヤキやクヌギ、ミズナラやコナラなどの広葉樹が生える。これらの樹木は深根性である。根が深いので乾燥した尾根でも水分を吸いだせる。谷合には、湿気を好む耐陰性のカシやシイやクスなどの照葉樹が育つ。これらの樹木も深根性であり、葉が多くても強風に耐えることができる。葉が肉厚なため比較的暖かいところを好むので、民家の防風林に用いられる。民家より標高が上がると、スギやヒノキやカラマツなどの針葉樹、ブナやミズキやシラカバなどの広葉樹が生える。これらの樹木は浅根性で、広く浅く根を張る。
天然の森では、深根性の樹木が杭を打つように発達し、土層のずれを防いでいる。同時に浅根性樹木が土壌中に網を張るように広がっており、土壌の亀裂を防いでいる。健全な森林の地表面には下草が密生し、落葉と落枝に覆われていて、強い雨滴が直接土壌にあたらず、侵食されにくくなっている。落葉樹は、冬に葉を落とし土に養分を与え、地面に日差しを与える。ちなみに常緑樹も、絶えず落葉している。その落葉量は落葉樹より多いことはあまり知られていない。山の様々な環境に適した樹木の針広混交林の方が、組み合わせでより強く豊かな土壌を形成する。健全な山は人間が管理しないと崩れてしまうようなものではない。山は自然に自分自身を守るようにできている。