有機農業の未来を考えよう「なないろ畑」の片柳義春氏

levin2020
2018年10月2日

2016年8月15日 ·

「なないろ畑」代表の片柳義春を講師に迎え、有機農法による野菜つくりと10年間の「コミュニティに支援された農業(=CSA)」への取り組みについて、お話しを伺った。有機農業は手間のかかる農法であるが、会員に安全で美味しい野菜を届けることができる。販路の獲得の難しい新規就農者にとって、一農家が数十世帯の消費者に対応する小規模のCSAは魅力的な方法である。CSAをやるには、会員と理念を共有することが重要であり、経営者には農業技術だけでなく、会員と信頼関係を築ける人柄が要求される。
安全な食を求めて、生産者と消費者が、それぞれ団体を形成するなどして、農産物を販売・購入する産消提携は、1970年代初期に始まった。産消提携では、消費者が品目を指定せずに旬の農産物が詰め合わされたバスケットをそのまま購入する。このシステムは前払い制という点でやや消費者が不利であった。その後、量販店においても有機農産物が購入可能になっていった。また「大地を守る会」などの大規模の流通事業者が仲介する産地から直接購入できる産直型システムが登場し、特定の生産者のものだけでなく、全国の産品が購入できるようになった。有機農産物の市場環境がグロ-バル化したことによって、日本では産消提携は減少した。
しかし低環境負荷な地産地消の流通システムや産消間の信頼関係の構築なしに、安全な食材の提供と真に持続的な農業を両立できない。CSAは、生産者と消費者が協力して持続的農業を実現する運動であり、その理念は、生産者と消費者の連帯により健全な持続的社会を実現することにある。
CSAの特徴は、
1)生産者と消費者が流通事業者を介さず直接に結びつく
2)消費者は前払いを原則に、一定期間の購入を約束して共同購入に参加する
3)生産者と消費者がともに地域の農業を支援する理念を有し、活動する
ことである。
片柳氏は、2006 年から神奈川県の田園都市線の中央林間駅の近郊で、参加者85名のCSA農場を経営している。一人当たり1万円/月程度で1年間の定期契約をすることで、生産者は収穫前に1000万円以上の経営予算を確保できる。会員は、活動に参加することで農業と生産者に対する理解と信頼関係を深めることができ、安全で美味しい野菜を得られる。この会には、花畑、味噌つくりなどの様々な活動があり、会員同士が交流も深められる。
片柳氏のお父様は、元は欄間職人であり、植木業を営んでいた。少年時代の片柳さんは、学校が嫌いであった。高校時代、干ばつ時にサツマイモの収穫に成功して現金収入を得た経験があり、農業に対する自信を持っていた。片柳氏は、ディスプレイ会社を経営しながら、都市公園の落ち葉の堆肥化や地域通貨活動に取り組んできた。45歳の時に会社を辞め、有機農業を始めた。後に独自のやり方がCSAと一致することを知ったという。今日、農場は、株式会社の形態をとっており、有給スタッフと研修生と会員ボランティアでなりたっている。参加者の理念意識が希薄化しないように、会員の意見を生産計画や経営に積極的に取り入れ、コミュニティ維持のための様々な工夫をしている。片柳氏は、「農が人と社会を育てる」という理念に基づき、CSAを通して、様々な人が様々な役割で連帯することで、土壌のように団粒化した社会が実現できるのではないかと期待している。

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