便利なことは必ずしもいいことではない
2016年9月4日 ·
近所にはアスレチック、ラフティング、キャンプなどのアウトドア活動の施設が作られてきている。観光業の活性化により、移住者が増えることを期待している。しかしそれだけでは、遊びに来るだけなので、移住にまでは至らないだろう。毎年、居住人口の2%の人が外部から移住してくれば、集落が存続するという研究報告を聞いたことがある。石徹白の場合、毎年6人、つまり毎年2世帯が移住してくれば存続できることになる。水力発電で作りだした電気は、村では使わないで、中部電力に売ってしまっている。小水力といえども初期投資の負担は大きい。しかしこうした活動によって地域の存続の意思を示せば、多くの人が石徹白に興味や関心を持つようになり、村が存続できる可能性が出てくる。実際、今では村民の1割を移住者が占めるようになったという。
平野夫妻は移住者の面談を行っている。空き家もかなりあるそうだが、地域に受け入れられる人でないと借りられない。平野さんたちも移住するのに苦労したようだ。移住者には地域のことを学ばせてもらう態度が必要であるという。冬の石徹白には3回は来てもらって、本当に暮らせそうか確かめてもらいたいと述べた。
平野さんのお話では、現在はSNSで連絡を取り合えるし、ネット宅配で注文もできるから、田舎に住んでいても昔よりずっと孤立感は少なくなっている。石徹白には、中途半端な田舎に増えている画一的なコンビニ店やレストランチェ-ン店、家電量販店やそれらの目障りな看板がないので、健全でいられるという。冬は雪が深いので、雪かきなど不便なことも多い。しかし馨生里さんは「便利なことは必ずしもいいことではない」という。いつも便利なものに頼っていると、身体が弱くなるし、自分では何もできなくなってしまうからだ。確かに毎日食しているお米だって、自分で栽培するのは容易ではない。殆どの人は服や靴を自分で作ったことはないだろう。家ともなれば、なおさらだ。田舎で暮らすと、身の回りのことが、お金を使わずに楽しめることに変わっていく。都会ではひとつの仕事で忙しく、身の回りのことは殆どお金で解決している。だから都会では、お金を使わずに楽しめることはなかなか増えていかない。こうした考えは退職後の人生設計にとても参考になった。