有機農法について
2016年8月15日 ·
有機農法では、雑草と米糠を混ぜて自然発酵させた堆肥などを用いて土育てをする。発酵時には70℃の高温になるので、雑草の種は死滅する。土壌中の堆肥は微生物によってさらに分解され、野菜に窒素とリンを徐々に供給する。カリは木材を燃やした灰を播いて供給する。適量な窒素は野菜の茎や葉を丈夫にし、リン酸は花や実つきを良くする。カリは丈夫な根を作り、根は土壌中の水分や養分の吸収力を高める。根からK+が吸収されると、電荷中性を保つために、H+が放出される。H+は土壌の粘土を風化させ、土壌にミネラルを供給する働きがある。ミミズなどの土壌生物により土壌が団粒化すると、水はけがよく水持ちの良い状態になり、様々な微生物が共存可能になるので、植物に栄養が供給され易くなる。
農協に野菜を供給するだけなら慣行農法で構わない。しかし安全で美味しい野菜を作るには、有機農法がよい。有機農法は、多種多様な品目を少量ずつ作る小規模な自給を基本としており、畜産と組み合わせて堆厩肥・飼料・種子なども自給できる循環的な農業である。有機野菜の栽培は手がかかるので、流通量が少ない。そのため有機野菜の市場価格は、慣行野菜のものより高くなってしまう。そういう理由で有機農法を成り立たせるには、生産者と消費者の産消提携が必要になる。
CSA活動は、消費者が近隣の農園と提携し、農園を手助けすることで、安全で美味しい野菜を適正価格で購入する活動である。生産者は農産物の豊凶や市場の価格動向に左右されずに、計画的に比較的安定した農業所得が得られる。消費者は農作業を体験することで、農家や農業を理解する。これは野菜価格の適正化につながる。泥つきの野菜でも、大小が混在するものでも構わない。全量を引き取るので、廃棄される野菜が生じない。新鮮な旬の野菜が手に入る。すべてを消費するように食べ方を工夫する。野菜の新しい食べ方も覚えることもできる。包装も簡略化し、配送を自ら行うことで、手間を省き、コストを抑えることができる。消費者は手助けをする活動を通して仲良くなり、コミュニティが形成される。
CSAが発達すれば、従来分断されていた都市と農村が融合し、都市と農村の中間地帯が増えていく可能性がある。有機農法は、単に農薬や化学肥料を使わない農法というだけではなく、健康な食生活や、豊かな人間社会を取り戻す産消共生システムに欠かせないものになる。しかし残念ながら日本ではCSA運動は広がりを見せていない。おそらく無農薬野菜に関心がある人は、経済的に余裕のある人なのかもしれない。そういう人たちは、品揃えの多い自然食品系の会に入って、高価格の野菜を好きなだけ選んでネット購入している場合が多く、面倒な手間がかかるCSAには入りたがらないのかもしれない。