自然エネルギー~エネルギー自給と市民電力の活躍
《5月29日(日)講座のまとめ・感想 これからの自然エネルギー~エネルギー自給と市民電力の活躍~》
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2016年6月2日 宍倉 惠
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3・11の震災と原発事故をきっかけに、エネルギーの自給への関心が高まっている。私たちは、コンセントの先が、巨大で問題だらけのシステムに繋がっているという事実に向き合わなければいけなくなった。いつまでも原発や化石燃料にしがみついててよいのか。目先の収益だけで物事を考えるのはやめよう。そうした想いから、日本でも市民の間で自然エネルギー革命が始まりつつある。
世界規模で見れば、各国の自然エネルギーへの注目度は近年飛躍的に高まっている。日本はその流れに逆行してきた。「自然エネルギーは現実的な選択肢ではない」と言われてきたが、それは、国が仕組みづくり・長期的なビジョンづくりを怠ってきたゆえである。
環境省の調査によると、潜在的には、風力発電だけで、今日本にある発電設備をはるかに上回る、実に原発500基分もの電気を作ることができる。
しかし、風車の事業には億単位の費用がかかる上に、日本では、地域ごとに各電力会社が独占して、エリア内の電力はそれぞれ自己完結で調整するというシステムをとってきた。豊富な風力資源がある場所から最大消費地である東京に送ることができない仕組みである。この世界的に異例な体制を問い直さずして、自然エネルギーの転換を渋ることは議論のすり替えである。
2012年のFIT制度(電力会社が決まった価格で自然エネルギーの電力を買い取る)により参入企業・グループは増えてきている。国レベルで自然エネルギー普及が進まぬ中、各地域で偏見や誤解と闘いながら地道に事業に取り組んできた人たちがいる。
自然エネルギーは、原発や火力発電といった中央集権型の巨大なシステムとは異なり、小規模分散型のシステムで運営することが可能である。地域の人・グループが主体となり、風土に合わせた地域のためになるものを創り出すことができれば、環境に負荷をかけない上、地域の自立にも繋がる。
ドイツ南部の小さな村シェーナウは、地域で電力会社を立ち上げた先進地である。チェルノブイリ原発事故をきっかけに、主婦たちの脱原発運動からはじまり、大手電力会社から権利を買い取り会社を立ち上げ、今は全国に顧客を持っており、全ての電力を自然エネルギーでまかなう。
神奈川県の地域の電力会社である藤野電力も、トランジションタウン・藤野という地域に根ざしたゆるやかなネットワークからはじまった。震災時の原発事故をきっかけに「そもそもエネルギーや電気とは何か」という問いから、自然エネルギーへと行き着いた。
問われているのは、原発から自然エネルギーへの転換だけではない。大切なのは意識の転換である。
以下、経済成長と引き換えに起こる公害問題とそれを放置する社会に対して警鐘を鳴らした、松下竜一氏の『暗闇の思想を』より抜粋。「誰かの健康を害してしか成り立たぬような文化生活であるのならばその文化生活をこそ問い直さねばならぬ。」(1972年)
とめどない経済成長神話の象徴とも言える原発の崩壊の後、松下氏の思想が改めて注目されつつある。
地域の人から理解を得て、出資を集めることができれば、今ほど多くの収益をあげずとも自然エネルギーを地域に取り入れることができる。大手資本による土地の奪い合いが起き、自治体や地権者はお金がいくら入るかの計算ばかりしている。地域の人たちが自分の子や孫への贈り物として投資してくれたら…と千葉大学・倉阪氏は語る。
電力会社や経済界の利権構造、国益より省益を優先する官僚機構、行政や補助金に依存した人々の意識、といった
日本的なシステムを脱却し根本を転換せねばならない。そして本当に必要なエネルギーや豊かさとは何かについて問い直すべきだ。
そのためには、個人・グループ・地域レベルでの取り組みから始めるべきだ。その小さな動きが連鎖し、いずれは国の枠組みを揺さぶることになるだろう。
私たちは、自分自身の手でエネルギーを創り、社会を変えていくことができる存在なのだ。
【市民の取り組みの例】
・長野県上田市 パネルオーナーで東京と地方を繋ぐ。
・サムソ島 自然エネルギー100% 4島民4000人と対話。
・ソーラーシェアリング 農業+ソーラー発電
・太陽熱温水器 太陽の熱で温めたお湯をお風呂や台所で使う。
・木質バイオマス ペレットにして
・温泉地での地熱利用
など…本を参照。
【中央集権から地方自治へ】
★現在のしくみ:地域は資金を出すことで外部からエネルギーを買う
★未来のしくみ:地域は資金を出し、自然エネルギーに設備投資をし、地域でエネルギーを創り使用する(エネルギー地産地消)→さらに創り出したエネルギーは外部に売却し、地域に外部から資金が入る
⇒しくみづくりが上手くいけばお金が地域内でまわるプラスαの効果が得られる。地域の自立。
★地域で自然エネルギーシステム樹立するポイント
・地域の特長の把握(ないものねだりしない)
・官民の枠を超えて進める
・補助金ありきのプロジェクトにしない
・地域の将来のビジョンをイメージし、どんなメリットを生み出すのか考える
・エネルギーを電気だけで考えない
→エネルギーは手段でしかない
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【廃炉への道「核燃料デブリ 迫られる決断」】
ちょうど講座の日の晩、NHKスペシャルで福島原発の廃炉にする取り組みのドキュメンタリーが放送されました。
今回の講義と繋がる部分があるかなと思い視聴したので、以下、概要載せます。
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震災の衝撃で、核燃料がメルトダウンした(溶け落ちた)。このメルトダウンした核燃料が固まったものをデブリと呼ぶ。デブリを除去すること=廃炉。3つの原子炉を同時に廃炉にしようという試みは前代未聞。
原子炉と格納容器に二重に覆われている核燃料。それがメルトダウンし、原子炉の底を突き抜けた。格納容器の底にたまったものをデブリと呼ぶ。
福島原発で廃炉に関わる人は1日6000人。デブリを取り除くべく、4ヶ月かけて、原子炉と外を繋ぐパイプの入り口に設置された核燃料を遮るブロックを取り除いた。その入り口からは30分滞在すれば人が死に至る値の放射線が検出された。
人が近づかずにデブリを取り出す方法はふたつある。
・冠水工法
水には放射線遮る効果がある。格納容器を水で満たし放射能の拡散防ぎつつ取り出す方法。
しかし福島では格納容器の損傷が激しく、水漏れするため困難。コンクリートを流して塞ごうとするも未だ実験段階で、すべての穴を塞ぐのは困難。
格納容器の損傷具合も1-3号機で異なるため損傷が酷いものは特に困難。
・気中工法
事故で取り出した前例はなし。水で防げないため、放射能強く危険性高い。放射線の中でも動ける特殊なロボットを開発中。蓋を開閉してできるだけ放射能を漏らさないことに加え、格納容器の気圧低く保ち空気を上に流さないようにする仕組みを開発中。
目標は2051年までに廃炉を完了すること。すでに国と東電は、ロボットの開発に1兆円以上かけている。
デブリの取り出しは2021年に開始予定。来年、2017年にはデブリの取り出し方針を決定する。
どういった方法で安全・確実にデブリを取り出すのか、決断のときが迫られている。安全性を第一とすると廃炉完了予定年数より時間がかかるかもしれない。
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【感想】
エネルギーを自給すること=社会の構造を問い直すことである、ということが良く理解できました。
目先の利益に縛られず、将来自分たちの子孫にどんな未来を残すべきなのか、賢い判断を迫られていると思います。
エネルギーは生活する上で身近な存在のはずだが、今利用してるエネルギーは決して持続可能なものではない。
ドキュメンタリーを視聴し、廃炉にするために大変な困難がつきまとうかを知った。非常事態とはいえ人がこれほどまでに異常な危険にさらされないと取り扱えない力に依存していることが恐ろしい。
エネルギー環境を整えることは、インフラを整えることと同義であり、生活の土台であり、未来に残していけるものでもある。
個人で取り組むとなると、まずは節電から…というところが始めやすいと思うが、先進的な例が、地域でのエネルギー自給は夢ではない、ということを示している。
農山村では、人が少ない・仕事がない…など他の目に見えやすい、わかりやすい問題ばかりとりだたされ、エネルギーまで意識を向けるのは難しいようにも思えるが、地域でつくる自然エネルギーの事例では、それによって地域に良い効果を生み出していることがわかる。むしろエネルギーは地域を良くする手段である、とさえ示唆している。
そうした本質的な問題に目を向け取り組むことで、本当の意味での自立したムラを作ることができるのかもしれない。